第五次産業革命!?日本におけるバイオテクノロジー最前線

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第五次産業革命!?日本におけるバイオテクノロジー最前線

2020年から急速に蔓延したコロナウイルスは、世界中の人々の生活様式を一変させました。甚大な経済損失に加え、非常に多くの人が今も命を落としています。

「アフターコロナ」「withコロナ」という言葉が叫ばれる中、人類は一体どのように進んでいくべきか暗中模索の状況が続き、各国の異なる対応に注目が集まりました。

そんな中、一筋の光明となったのはPCR検査技術そしてワクチンの開発および流通です。

人類が前に進むための第一歩を踏み出すことができたのは、バイオテクノロジーの研究によるものであり、研究に心血を注いでいる研究者たちの大きな成果でした。

未曾有の事態を解決に導くのみならず、難病や再生可能エネルギー、人工肉など多くの社会問題を解決できるポテンシャルを持つバイオテクノロジー。

これからの人類はそして日本は、バイオテクノロジーをどのように活用していくのでしょうか。本記事では、その最前線に迫ります。

バイオテクノロジーとは「生命の力×先端技術」の掛け合わせ

バイオテクノロジーといっても、具体的に何を指すのかわからない方も多いと思います。ここでは、「バイオテクノロジーとは?」「バイオテクノロジーの歴史」について解説していきます。

バイオテクノロジーとは?

極小の細菌、ウイルス、バクテリアから人間に至るまで「命」がある全ての対象を多角的な視点で研究する生物学(バイオロジー)とAIなどの最先端技術(テクノロジー)をかけあわせた新しい学問のことをバイオテクノロジーといいます。別名、生物工学とも呼ばれます。

様々な生物の生命活動のルールやパターンを解析するだけではなく、身体の構造、遺伝子や細胞なども研究し、以下のような研究結果を生み出しています。

  • 遺伝子治療や再生治療(医療)
  • 機能性食品や人工肉(食)
  • バイオマス燃料、廃棄物・排水処理(環境)
  • 化粧品やワクチン、バイオ医薬品(人の研究)

病気や寿命の問題、食や環境問題など人類が地球で暮らしていくにはいずれ限界を迎えてしまうことに対するアプローチをするため、研究開発に成功すると人類に大きな影響を及ぼすことができるのです。

遺伝子組み換えなど…実は歴史のあるバイオテクノロジー

バイオテクノロジーと聞くととても最先端なイメージを持ってしまいがちですが、実は人類は多くのバイオテクノロジーを活用して生活を豊かにしてきました。

例えばパン、チーズ、味噌や醤油、キムチなどは「発酵」というプロセスを踏みますが、カビなどを用いたバイオテクノロジーです。

また、肉質を向上させるための牛の交配、毛皮を採取しやすくするための羊の交配など、人類に恩恵のあるようにコントロールする取り組みもバイオテクノロジー。このように、身の回りはバイオテクノロジーで溢れており、実は今に始まったことではないのです。

遺伝子研究の最前線「ニューバイオテクノロジー」

新しいバイオテクノロジーの考え方の主軸は、バイオエコノミーです。バイオエコノミーとは、バイオテクノロジーの技術が生産に寄与した社会が作り出す経済のこと。

OECD(経済協力開発機構)はその加盟国における2030年のバイオ産業市場が全GDPの2.7%(約200兆円)にのぼると推定しています。

内訳は、健康が25%、農業が36%、工業が39%。それぞれへのアプローチをしていくために技術開発が進んでいると言っても過言ではありません。

近年になってよく耳にするバイオテクノロジーは、細胞やDNA、ゲノム(遺伝子の情報全て)などに関する科学知識と膨大な研究データに基づいた技術です。遺伝子レベルで組み替え書き換え、iPS細胞のような新しい細胞を作り出すなど、SF映画での設定のようなことまで実現できるようになってきています。

これら新しいバイオテクノロジーは、過去の物と区別するため「ニューバイオ」との呼称がつけられるようになりました。

※出典:「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流~生物機能を用いた新産業創出に向けて~|経済産業省

医療・製薬分野のニューバイオ

遺伝子情報を解析するゲノム研究の技術が高まっていることによって、人間の遺伝子配列は編集可能な領域にまで達しています。

オーダーメイド治療(テーラーメイド、個別化治療)

一般的に病気の治療においては症状や所定の検査結果に対するアプローチでした。治療方法が確立しており、医師によって適していると判断される治療を施されます。

しかし厳密には人間の身体の機能はそれぞれが微妙に違うため、投薬が合わない人もいます。

これを解決できるのは、オーダーメイド医療です。パーソナルに遺伝子情報を解析し、そのデータを元に効果の期待される治療、薬を提供していくので、より精度の高い治療が可能になります。

IT技術を駆使した製薬

一口に「薬」と言っても、薬に応用できる物質は地球上に「気が遠くなるほど多く」存在しています。

また、これらの物質を探し出し、仮説立て、そして動物実験、人間の体を使った治験を含む開発期間を経るまでに非常に長い期間を要します。

ニューバイオでは「遺伝子の研究×AI・量子コンピューターなど」によって特定のタンパク質を特定し、それに作用する物質を見つけ出して製薬に還元する研究が進行しています。

これにより薬の開発期間の大幅な短縮、副作用が少なく高い効能を持つ製薬ができるようになっていくと言われています。

パンデミック発生時の大量生産に期待がかかる「DNAワクチン」

従来のワクチンは、鶏卵を使用して大量生産していました。そのため、計画を変更して急に大量のワクチンを製造するような事態への対応が難しいなどの課題もありました。

DNAワクチンは、ウイルスのDNA情報を使う、新しいタイプのワクチンで、合成が容易、つまり大量生産に向いているという利点があります。

そのためパンデミック(世界的な病気の大流行)などが発生した場合にも、迅速に大量のワクチンを用意できるのではないかという、大きな期待のもと各国で研究が進められています。

日本でもベンチャー企業であるアンジェスが、新型コロナウイルス感染症向けのDNAワクチンを、大阪大学などと共同で研究を進めています。

再生医療・遺伝子治療

病気やケガなどで、身体の一部、あるいは機能が失われることはままあります。

これまでは臓器移植や義手、義足、義眼などで失われた機能の回復や代替をしていましたが、拒絶反応や装置への抵抗など一定のリスクが常にありました。

再生医療とは、自分の体の細胞などを培養することで臓器を作り、失われた体の機能を回復しようという新しい医療であり、リスクなく身体を回復させられるため夢のような技術であると、高い関心を集めています。

またDNAが作用する病気の場合、遺伝子そのものを書き換えなければならないケースもあり実質治療が不可能と言われていました。

「ある遺伝子の欠損によって生じる病気には欠けている遺伝子を補う」「異常な遺伝子による病気にはその働きを抑制する」といったアプローチができるようになれば、劇的に難病治療ができるようになっていくでしょう。

 

農業・環境分野のニューバイオ

人口増加を解決する「食糧増産」

今後2050年までに、以下の9カ国にて著しい人口増加が発生すると言われています。

  • インド
  • ナイジェリア
  • パキスタン
  • コンゴ民主共和国
  • エチオピア
  • タンザニア連合共和国
  • インドネシア
  • エジプト
  • 米国

※予測される人口増が多い順

インドに至っては2027年頃、中国を抜いて世界で最も人口が多い国になるとみられています。このように発展途上国を中心に地球規模で人口が急増しており、確実に食糧が足りなくなってしまうでしょう。

食糧生産力を上げるために、遺伝子を編集して病気や害虫に強い農作物を作る「新しい品種改良」は必須とされています。

自然環境保護とニューバイオ

人間の生活から生み出されるゴミや汚水は、なるべく微生物による分解のプロセスが発生するべきです。人間が生み出す汚染を減らして自然に還すことは環境保全のベースとなる考え方です。

  • 石油・薬品などによる汚染を微生物の力などを使ってキレイにするバイオレメディエーション
  • 生物分解されにくいプラスチック類を削減し、自然に還るプラスチックや植物由来のビニール袋の普及
  • いずれは枯渇する有限資源である石油エネルギーの代わりに、トウモロコシやサトウキビなどの穀物を原料とするバイオマスアルコールや藻や菌などを使ったバイオ燃料の活用

などは全てニューバイオの研究によって進行するため、ニューバイオの発展と共に環境保護が進むことも認識しておきましょう。

日本におけるバイオテクノロジー最前線

各国が競って技術開発をおこなっているため、国際競争は激しさを増しています。このような状況下で日本での取り組みはどうなのでしょうか。

まず日本には、豊富な微生物菌株、発酵最適化などの工業化技術などの古くからあるバイオ技術を洗練してきた歴史があります。

これらは非常に優れた効果を生み出しますので、バイオテクノロジーとしてAIやDNAの先端技術を駆使することで、高い技術競争力を持てると言われています。

※出典:「バイオテクノロジーが生み出す新たな潮流~生物機能を用いた新産業創出に向けて~|経済産業省

ただ、国内バイオ産業の市場調査結果では、

  • 2003年〜2015年で約90%市場規模が成長している
  • 2015年に約3兆円程度
  • 健康・医療分野が約6割を占め、工業分野は約1割と偏りがある

と、まだまだ課題が山積みといえるでしょう。

生物細胞が基本的に持つ能力を、バイオテクノロジーとITの力で合成・編集などをおこない、そのポテンシャルを最大限に引き出した細胞のことをスマートセルといいます。

日本は、スマートセルによる技術促進を進行させて伝統的なバイオ技術のレベルを底上げするべきでしょう。

例えば、以下のような方法で新たな時代に対応した調査や制度の構築をスピーディに行っていくのではないでしょうか。

  • ロットでの生産をすべき製品の分野を特定
  • 異分野技術や産業、新しい技術と古い技術を総合的に合わせる
  • 現在の制度そのものの運用見直しや手続きの簡略化
  • 新しい技術のリスクに対応した法律やガイドラインの制定

古くからある技術と新しい技術の双方を併せ持つ日本は、国際競争に負けないように技術開発と発明を繰り返していくことでしょう。

経済発展もさることながら、日本はバイオテクノロジーの先端を走れる国家としてのポテンシャルを十二分に持っています。法制度の改定などには時間を要しますから、早期に決議がなされることに期待すべきでしょう。

おわりに

納豆や味噌などを代表とした発酵技術や遺伝子組み換え技術が、日本のバイオテクノロジーの柱です。先人の培った技術を大切にしつつ新しいバイオテクノロジーを掛け合わせることで、国際競争に負けない技術力や生産力を保有することができるでしょう。2022年以降のバイオテクノロジーにも要注目といえますね。

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