バイオマス発電をわかりやすく解説!メリットと乗り越えるべき課題も
環境
昨今、脱炭素社会を目指して再生可能エネルギーに注目が集まってきています。
さまざまな発電方法がありますが、天気の具合に大きく左右されてしまうものも…他方、バイオマス発電は天気に左右されない安定した発電方法です。
そこで今回ハピマガでは、現在成長を遂げているバイオマス発電について、メリットや課題についてわかりやすく解説していきます。
バイオマス発電についての基礎知識になれば幸いです。
バイオマス発電とは?
バイオマス発電とは、主に植物のような再生可能な生物資源を用いて発電をおこなう方法のことをいいます。
バイオマスという言葉は、「bio(生物)+mass(量)」と分解することができます。もともとは「生物資源量」という意味の、生態学で用いられる言葉でした。
その名の通り、生物を由来とするさまざまな有機物が原料となり、以下の4つが代表的なバイオマス資源とされています。
- 木質系:森林に置き去りにされた間伐材、未使用及び廃棄された木材など
- 植物系:稲、菜種、サトウキビなどから精製されるエタノール、藻など
- 家畜系:牛・豚・鳥などの排泄物など
- 食品系:生ゴミ、食料廃棄物など
出典:「バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー」|資源エネルギー庁
バイオマス発電は、上記の原料に最も最適な方法でエネルギーへと変換されます。バイオマス発電の代表的な手法は以下の通りです。
- 直に燃焼する
- 微生物による発酵
- 密閉空間で加熱し気化、または液化させる
- ガス化させる
- 高温高圧の水による化学反応
このように、素材やその地域が保有する技術によってさまざまな方法が存在します。
知られざるバイオマス発電のメリット
バイオマス発電には大きく分けて3つのメリットがあります。
環境にやさしい
バイオマス発電は、本来廃棄予定だった食料や家畜の排泄物などを利用します。
廃棄物の処理には多くの温室効果ガスを排出するため、単純に排出量の削減に寄与することになります。
また、従来の二酸化炭素を排出する化石燃料になり代わり、光合成で二酸化炭素を吸収する植物を燃料にすることによって、温室効果ガス排出を減らすことができるでしょう。
このように、バイオマス発電の根幹にある考え方は「カーボンニュートラル」。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量=吸収量にすることです。
「脱炭素社会」の実現を目指す世界的な取り組みで、日本でも「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、温室効果ガス排出の削減、及び吸収作用の保全&強化に力を入れ始めています。
このカーボンニュートラルの観点においてバイオマス発電は非常に親和性が高く、環境にいい発電方法ということになります。
安定した供給を実現できる
バイオマス発電は、太陽光発電のように天候や時間に左右されることはありません。
例えば木質系バイオマスの場合、資源が安定供給されることによって24時間休まず発電し続けることが可能になります。
また、そのとき発生した熱も余さずエネルギー利用できるので、高いエネルギー効率を実現できるでしょう。
晴天の日照時間のみ太陽光発電、日没とともにバイオマス発電という切り替えで双方を補完しあう関係が望ましいとされ、その実現の難易度はそう高くもありません。
また、資源を供給するために雇用が発生し、経済の循環に寄与することもメリットとして忘れてはならないでしょう。
ローカルな地点の経済活性化が期待できる
バイオマス発電は様々な生物資源を活用します。
これはつまり、化石燃料や原子力発電のように発電所を局地集中させる必要がなくなることを意味します。
東日本大震災の未曾有の被害を被った際、福島原発がメルトダウンしたことは記憶に新しいです。
このとき膨大なエネルギー供給がストップし、リスクの分散への注目が高まりました。
エネルギー源を多様化し、多くの地点に分散することは、こういった事態を未然に防ぐことができます。
当然、日本各地に分散することになりますが、分散先の地域には雇用が生まれ、経済の循環が発生します。
これにより地域活性化を期待できるようになるのです。
バイオマス発電が乗り越えるべき課題
メリットが多く注目されているバイオマス発電ですが、乗り越えるべき課題が2つあるのでご紹介していきます。
資源の収集、対応する地点への運搬、保管のコスト
バイオマス資源のほとんどは再生可能な生物資源。森林や田畑、畜産現場など廃棄されるポイントはある程度固定化されてしまいます。
それぞれの地点から発生した資源を収集し、それぞれのバイオマス発電所に運搬、使用するまでは保管しなければなりません。
これは、莫大なコストがかかる上に、非常に効率の悪い資源調達方法といえるでしょう。
そのため、非常にコストがかかる小規模事業者が各地に分散されるケースが想定され、大きな課題と認識されています。
コストがかかってしまうことは当然良くありません。また、コスト問題から付随して、事業者がビジネスとして参入する際の大きなハードルとなってしまいます。
今後日本は、新しいバイオマスエネルギーのビジネスモデルを模索していかなければなりません。
上記を解決した事業者が、バイオマス発電のインフラとなることでしょう。
国内木材の確保が難しく、輸入木材量が増加している
バイオマス燃料に使用されるのは、家屋の柱などに使用されていない底質材と呼ばれるものです。
日本では戦後安価で加工のしやすい海外材を輸入してきました。そのため、国内の林業が衰退をし続けていることは事実としてあり、国内材の確保が難しい一因となっています。
また、各地の森林や山の権利関係も迷宮入りしているケースが多いといわれています。
これは、遡ること明治時代の登記がそのまま放置されているなどのケースもあり、端的にいうと「誰の土地かわからない」場所が多いのです。
これでは林業を推し進めることはできません。そのため国内材を用いる場合には、北海道、東北などの林業が根付いている場所に、バイオマス発電所が局地集中することになります。
バイオマス発電は、伐採→加工→輸送→燃焼という流れが一般的ですが、輸入材は国内材に比べて温室効果ガスの排出量が多くなってしまいます。
これは輸送過程で相当量の温室効果ガスを排出するためです。
このように、まだまだ多くの課題が山積みのバイオマス発電。
しかし、政府の国策と連携して状況が改善し「2050年カーボンニュートラル」が実現することができれば、日本のエネルギー事情は大きく様変わりすることでしょう。
おわりに
日本では固定価格買取制度(FIT)が導入され、バイオマス発電も再生エネルギー電源の1つとされれいます。
政府が2018年に策定したエネルギー基本計画では、2030年度の電源構成のうち、バイオマス発電は4%前後とされており、まだまだ普及が敵っていません。バイオマス発電の今後の動向には注目ですね。